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除染技術カタログについて

 

※「除染技術カタログ」の取りまとめ経緯,背景については下記(「福島第一原子力発電所事故に係る福島県除染ガイドライン作成調査業務」報告書より抜粋)を参照下さい。なお,除染技術カタログ(平成23年11月22日公開)は,公開当時の知見を基に除染に必要となる技術を網羅的にとりまとめたものです。

 


4.1.1 取りまとめの経緯

 

 放射性物質が沈着している地域で効率的な除染作業を進める場合,計画段階で採用する技術の選定が重要となる。この問題に関連して,国の原子力災害対策本部は,平成23年8月26日に「除染に関する緊急実施基本方針」において,特に高い線量の地域も含め,各地域でのモデル実証事業を通じて,除染に必要となる技術情報を継続的に国が提供することを示した。一方,その時点でも国や地元自治体等による放射線モニタリングにより,各地域における放射線量等の状況が既に明らかとなっており,除染の早急な取り組みの要望もあった。

 

以上の背景から,委託事業等の成果が得られる前にも,東京電力福島第一原子力発電所での事故発生後に行われてきた,学校等の除染試験,農地の除染の実証試験等の様々な取組から得られた知見に基づき,「除染技術等調査推進委員会」での意見を取り入れて,「技術カタログ」を取りまとめることとした。カタログの取りまとめにおいては,日本原子力学会の原子力安全調査専門委員会クリーンアップ分科会による除染技術カタログ(平成23年10月24日;日本原子力学会,2011a)や,2002~2006年に欧州委員会の下で進められたEURANOS プロジェクトが取りまとめた除染技術データシート等(http://www.euranos.fzk.de/)(翻訳版,日本原子力学会,2011b)の諸外国の知見も取り入れた。最初の技術カタログ(第1版)は,平成23年11月22日に内閣府原子力被災者生活支援チームより公表された(内閣府,2011)。その際,本委託事業等の除染に係る様々な活動や実証試験で得られる新たな知見やデータ等を踏まえて,適宜改訂を行うこととした。

 


4.1.2 除染対象毎の除染技術の抽出

 

 国の原子力災害対策本部は,平成23年8月26日に「除染に関する緊急実施基本方針」の他に,各市町村で効率的,効果的に除染を実施するために必要な事項について,「市町村による除染実施ガイドライン」(以下,「除染実施ガイドライン」とする。)を公表した(原子力災害対策本部,2011)。その中で,以下の対象ごとに,除染の方針や方法について,暫定的な考え方を示した。

 

  • 生活圏(家屋・庭,道路,学校・保育所・公園など,街路樹など生活圏の樹木)
  • 森林
  • 農地
  • 河川

 

 この暫定的な的な考え方の中では,除染作業を進めるにあたり,被ばくの低減を効果的に図るための手順や注意点がされた。技術カタログの取りまとめにあたり,除染作業の計画立案で除染実施ガイドラインと照合しつつ,技術を選定することが想定して,上記の対象ごとに技術を抽出,整理した。ただし,河川については,除染実施ガイドラインでは「河川水による遮へい効果を考慮した場合,住民への影響は限定的だと考えられる。」とされていた。また,他の対象とは異なり,事故発生後に除染試験等の報告例がなかったため,河川の除染については,技術カタログの中に含まなかった。一方,それまでの除染作業で得た経験から,土壌等の除去物が大量に発生することが懸念されていたため,処理する除去物の容積を減少できる技術について,まとめて提示することとした。

 

 以上の考えに基づき,除染実施ガイドラインの記載に従い,除染対象は,「A. 家屋(その他の建築物)・庭」,「B.道路」,「C.学校・保育所・公園など」,「D.街路樹など生活圏の樹木」,「E.森林」及び「F.農地」とアルファベット順に分類し,技術を抽出しさらにA-1のように数字を付した上で,技術カタログの第1版に記載した。表1に各対象で抽出し,技術カタログの第1版に記載した技術を取りまとめた。なお,4.1.2に記したとおり,土壌等の除去物の対策が保管場所の確保が課題となることが予想されたため,G.項として「除去物の減容化を可能とする技術」を付け加えた。

 

A.からF.の中で記した各技術については,他の対象物についても適用が可能なものが多く含まれる。そこで,技術カタログの付表として,各対象の除染において,適用可能と考えられる技術を取りまとめた。ここでは,例えば,家屋については,屋根,壁,雨樋,側溝の他に,ベランダ,窓及び駐車場を追加する等,対象をより詳細に分類した。

 

表1 各除染対象についてカタログで選定した技術一覧

認識番号

除染技術

A.家屋(その他の建築物)・庭

A-1

屋根,屋上等の清掃,拭き取り,ブラシ洗浄

A-2

屋根,屋上等の放水(高圧)洗浄

A-3

雨樋・側溝等の清掃,洗浄

A-4

壁の削り取り,屋根の撤去・葺き替え

A-5

庭等(狭い土地)における表土等の除去

B.道路

B-1

道路(舗装面)の清掃,洗浄

B-2

道脇や側溝の除染

B-3

舗装面の剥ぎ取り

B-4

未舗装の道路,のり面の土面における表土除去,客土

C.学校・保育所・公園など

C-1

広い土地における表土除去

C-2

芝地の除染

C-3

土地表面の被覆(上下層の土の入替,芝等の被覆)

C-4

拭き取り,剥ぎ取り(金属面)

C-5

拭き取り,剥ぎ取り(木面)

C-6

砂場の除染

C-7

プールの除染(吸着剤を用いた水中の放射性物質の除去)

D.街路樹など生活圏の樹木

D-1

街路樹,公園,庭などの生活圏の樹木

E. 森林(住居などから近隣の部分)

E-1

住居などの近隣の森林の除染

F.農地

F-1

農地の表土削り取り

F-2

農地の芝,牧草の剥ぎ取り

F-3

反転耕(土層の天地返し)

F-4

水田の土壌撹拌(代かき),除去

G. 除去物の減容化を可能とする技術

 

 

 

1) A.家屋(その他の建築物)・庭

 

福島県内で進められていた除染作業の経験より,放射性物質は,屋根や屋上に溜まっている落ち葉(枯葉),苔,泥等の堆積物に付着していることが確認されていた。そのため,既に試験的に進められていた除染作業を参考にして,堆積物を清掃,拭き取り,ブラシ洗浄により取り除く技術をA-1として,排水口等での放水洗浄(高圧洗浄)をA-2として提示した。雨樋や側溝については,溜まった堆積物に付着した放射性物質が原因で,周囲と比較しても顕著に放射線量が高いことが確認されていたので,その清掃方法をA-3に示した。放射線量が高い地域では,洗浄,清掃等により,被ばく線量の十分な低減効果が得られないことも想定されたため,日本原子力学会での検討を参考として,壁の削り取り,屋根の撤去,葺き替えをA-4として示した。屋外で放射性物質は,土の表面や草の根元等,特に家屋や建物の近くの雨水が流出した地点において,線量率が局所的に高くなっている可能性が示唆されていた。そこで,庭等の狭い土地において,既に進められていた土面の表層,草や芝を除去する技術をA-5とした。

 

2) B.道路

 

道路について,舗装面の除染は洗浄作業等をB-1として示し,雨水の流出などによって放射性物質が溜まりやすい道路脇,側溝等の除染をB-2として示した。コンクリートやアスファルト表面の除染で,洗浄作業だけでは除染効果が期待できない場合,ブラスト作業等による剥ぎ取りが有効となり,既に実績もあったため,B-3として掲載した。道路脇にあるのり面の土面については,家屋の庭と同様に表土の除去が想定されたため,B-4として示した。

 

3) C.学校・保育所・公園など

 

小児,幼児が長時間滞在する学校,保育園等については,早急な除染作業が広く要求されていた。その中で,校庭等で放射性物質が沈着していた表土の剥ぎ取りが広く進められていた。一方で,除去した土壌が大量となり,保管場所の確保が問題点として指摘されていた。そこで,削り取る厚さを適切に決める点等を明記したうえで,土壌の除去に関係する技術をC-1として示した。公園等の芝地については,完全に除去することなく,芝生の再生が可能な除染方法が試験されたため,C-2として示した。表層土壌を除去した場合でも,他に保管場所を必要としない方法として,上下層の土の入替(天地返し)がチェルノブイリ事故後も試験されていた。また,高線量域で,放射性物質を含む土の再浮遊を防止するため,芝生で土地表面を被覆する技術の試験例があった。これらの技術は,土地表面の被覆としてC-3にまとめて記載した。学校や公園の遊具等,生活環境には家屋や建物以外の構造物が存在する。これらの構造物について,金属,木等の材質に応じて,拭き取りや剥ぎ取りで,表面に付着した放射性物質を除去する方法が試行されていたので,金属面及び木面の対策として,C-4及びC-5に示した。砂場は多くの場合に学校や公園にあるが,掘り起こしを考慮して,他の土とは異なった厚さで除去することが適切であることが確認されていたので,砂場の除染をC-6とした。また,福島県内では学校,幼稚園のプールに溜まっていた水について,周辺の農水路等への影響が指摘され,排水等の処理ができない状況にあった。そこで,固溶分離により上澄み溶液を排出,残存する汚染沈殿物のみを除去物として回収する手法をC-7として示した。

 

4) D.街路樹など生活圏の樹木

 

 樹木の対策については,放射性物質が付着した部分を剪定で除去することが,除染実施ガイドラインで指摘されていた。また,周辺地表面の落葉等の堆積有機物に放射性物質が付着していることが,チェルノブイリ事故後の海外での調査でも指摘されていた。生活圏の樹木の対策は,これらの知見に基づいてD-1として取りまとめた。

 

5) E. 森林(住居などから近隣の部分)

 

 森林域の除染は,チェルノブイリ事故後の調査研究でも,困難であることが報告されていた。今回の事故後の対応として,平成23年9月30日に原子力災害対策本部から「森林の除染の的札な方法等の公表について」,同日農林水産省より「森林内の放射性物質の分布状況及び分析結果について」が公表された。これらの公表資料に基づき,住居等の近隣にある森林地帯における地表面の堆積物除去及び枝葉の除去について,その方法等をE-1として取りまとめた。

 

6) F.農地

 

 農地の対策については,その場所での放射線量の他,作物に含まれる放射性物質の量を減じさせるという観点が必要とされる。農林水産省では,事故後,福島県の農場において,様々な除染方法の試験が進められ,平成23年9月14日にその結果が公表された。また,その結果に基づき,有効と考えられる除染技術について,その方法,注意点などが取りまとめられていた。そこで,この公表資料を参照して,「F-1 農地の表土削り取り 」,「F-2 農地の芝,牧草の剥ぎ取り 」,「F-3 反転耕(土層の天地返し) 」及び「F-4 水田の土壌撹拌(代かき),除去 」を技術カタログの中で掲載した。

 

7) G. 除去物の減容化を可能とする技術

 

 事故の発生後に進められていた校庭における表土除去等の作業を通じて,既に除染に伴い発生する放射性物質が含まれる除去物の保管場所の確保が問題点として指摘されていた。そこで,除去物の減用化を可能とする技術についても,カタログの中で掲載した。

 


4.1.3 各技術での記載項目

 

 除染技術の選定にあたっては,手法及び期待される被ばく低減の効果の情報を参考にすることが予想された。この他,除染実施ガイドラインでも示されているように,除染作業では作業者の安全確保,除染作業に伴い発生する放射性物質を含む除去物の安全な取り扱いや保管場所の確保等の安全確保も,除染を進める際の重要な課題となる。そこで,技術カタログでは,下記の項目について,分かりやすさに配慮しつつ整理した。

 

除染技術の概要

関連する作業内容,注意点(除去物の発生,管理等)の全体的な説明

 

除染方法

除染の手順,各技術に該当する手法間の比較(利点等),関連する他の技術

 

除染に必要な機器

作業に使用する機器,多い場合は代表的なものを選択して記載

 

除染に必要な人員

必須(有資格者,専門業者),もしくは作業を効率的に進めるための専門家等

 

必要な安全対策

除染作業に伴う被ばく,汚染拡大の対策(放射性物質の飛散等),高所作業等の一般的な安全対策

 

 ・被ばく低減の効果

空間線量率,表面汚染の低減率(実測値を中心に)

 

 ・注意点

   除染効果が得られない可能性のある状況,コスト等の負担

 

また,カタログの冒頭では,除染技術の選択にあたって,投入した負担(費用,労力)に見合った効果(被ばく線量の低減)が得るためには,適切な除染技術を選定することが重要である点を言及した。この他,全ての除染技術に共通する留意事項として,除染前の放射線の状況を把握するためのモニタリングにおける,専門家の助言,関与の必要性も明記した。

 

4.1.5に,「除染技術カタログ」の第1版にある技術等の説明部分を掲載する。

 


4.1.4 技術カタログの改訂

 

 本事業を通じて,技術カタログ第1版を公表して以降,除染技術の知見やデータ等を蓄積することができた。例えば,家屋の屋根については,素材等により異なる表面の汚染状況をモニタリング等で把握し,いくつかの除染技術が試験された。その結果,拭き取り,研磨等による,多くの排水の発生を伴わない除染技術について,被ばく低減効果等のデータが得られた。ショットブラストによるコンクリート材等の研磨については,道路の他に家屋の構造物でも進められた。この中で,発生粉塵の回収方法,走行ブラストにおける投影密度(走行速度)と除染効果の関係のデータ等を取得した。表土の除去については,ホットスポットの生じやすい場所,傾斜地での崩落防止を鑑みて,削り取る土壌の厚さを設定する点等の有用な知見を得た。森林については,南相馬市ハートランドはらまちにおける除染試験により,作業に対する効果的な除染効果を得るための範囲の設定や技術に関するデータを得た。これらの成果は,4.1.1に記したとおり,得られたデータ等を整理したうえで,技術カタログの改訂に反映させる予定である。

 

なお,本事業の他,「警戒区域,計画的避難区域等における除染モデル実証事業」,「除染技術実証試験」「汎用機材を用いた様々な除染(JAEA福島研究開発部門のHPへ掲載)」などの取組が進展した。また,農地については,平成24年3月に農林水産省が「農地土壌の放射性物質除去技術(除染技術)作業の手引き」を公表している。これらの事業や公表資料からも,除染技術に関する有益な知見等を得ることが期待できる。一方で,特に,モデル実証事業及び技術実証試験については,事業の目的,対象が異なるため,当該技術が直ちに実用に供し得るか否か等を検討する必要がある。

 

表1にある各技術は,以下の考え方で選定した。

 


4.1.5 技術カタログ第1版(平成23年11月22日 内閣府原子力被災者生活支援チーム)

 

  1. 除染技術カタログの活用にあたっての留意事項

 

除染にあたっては,投入した負担(費用,労力)に見合った効果(被ばく線量の低減)が得られるよう計画を立てる必要があり,そのために除染対象や汚染の状況に応じた適切な除染技術を選定することは重要である。

また,除染作業の結果発生する除去物の安全な取り扱いや保管場所の確保等は,除染を進める際の重要な課題となるが,除去物の発生量は適用する除染技術によっても異なることから,除去物の発生量をなるべく低減化する観点からも除染技術を選定していくことが求められる。

一方,除染技術を適切に選定し,効果的な除染を行うためには,除染を行う範囲や対象物についてモニタリングを行い,汚染の分布状況を正確に把握することが前提となる。除染作業前のモニタリングにより得られる情報等から,必要な除染技術や除染作業の方法を決定することが可能となる。また,除染の作業中・作業後のモニタリングを効果的に行えば,除染による被ばく低減効果を確認しつつ作業を進めることができ,除染の進捗状況に応じた適用技術の変更や,追加の除染作業の要否の判断等を行うこともできる。

これらの点に留意しつつ除染技術を選定し,これらを適切に適用して除染を安全かつ効果的に進めていくため,除染技術の選定,適用に当たっては,放射線や放射能に関する専門家の助言を受けることが求められる。

 

なお,この除染技術カタログは,現時点での知見を基に除染に必要となる技術を網羅的にとりまとめたものであり,国による除染に係る財政措置等の適用範囲を示すものではないことに留意されたい。

 

  1. 各除染対象に関する技術

【省略】


 

 

付表 除染対象と適用可能と考えられる技術

 

 

対象

適用可能と考えられる技術

 

 

屋根

A-1A-2A-3A-4

A-1A-2A-4

ベランダ

A-1A-2C-4

A-1C-4

雨樋,側溝

A-3

駐車場

B-1B-3

 

通路

(土)A-5B-2B-4,(舗装)B-1B-3

 

土面,草地

A-5B-4C-2

植栽

D-1

(敷石)B-1,C-4,(水)C-7

(金属)C-4,(木)C-5

塀(玄関)

A-1A-2A-4C-4C-5

舗装面

B-1B-3

側溝

B-2,(のり面)B-4

街路樹

D-1

公共的な

建物

公園

運動場

屋上

A-1A-2A-3A-4

A-1A-2A-4

A-2C-4

雨樋,側溝

A-3

駐車場

B-1B-3

プール

D-7

通路,敷地

(土)A-5B-4C-3,(舗装)B-1B-3

土面

A-5,  B-4C-1C-3

芝地

A-5C-2

植栽

D-1

砂場

C-6

遊具

(金属)C-4,(木)C-5

噴水・池

(構造物)B-1C-4,(水)C-7

ベンチ

C-4C-5

農業

畜産

水田

F-1F-2F-3F-4

畑地

F-1F-2F-4

牧草地

F-2

果樹園

D-1E-1

畜舎

A-1A-2A-3A-4

林地

E-1