2.6 廃棄物の処理と保管

 除染モデル実証事業では,除染により生じる除去土壌等の除去物の発生をできるだけ抑制するように除染手法を適用しました。手法の適用にあたっては,まず放射性セシウムの土壌深度方向の分布を測定にて把握します。放射性セシウム濃度が高い場合は,表層土壌をできるだけ薄く除去する方法を導入し,低い場合(農地土壌の放射性物質除去技術(除染技術)作業の手引き(農林水産省,2012)参照)は土壌の上下入れ替えにより,汚染されていない土壌により遮蔽することによって,除去土壌を発生させずに,線量低減を図りました。一部の対象地区では,スキャンソートを用いた土壌除去物の仕分け試験により,設定した線量による仕分けが可能であるとの見通しが示されました。

 

 減容化で重点を置いたのは,森林の除染等で生じた可燃性除去物でした。可燃性除去物の減容化には,細断,圧縮,焼却(高温焼却(> 800 °C)と低温焼却(250~400°C))などの方法を用いました。除去物の焼却(高温)処理については,減容率が高く排気へのセシウム移行も低く抑えられます。設備が比較的大規模となること及び焼却灰の取扱いに注意を払う必要がありますが有効な手法と考えられます。

 

 除染活動で生じた洗浄水は,吸着,凝集沈殿,ろ過などを適宜組み合わせ,処理を行いました。濁り等の浮遊物が多く存在する洗浄水等は,浮遊物中に多くのセシウムが吸着しており,この浮遊物を凝集・沈殿処理することで高い洗浄効果が得られました。濁り等の浮遊物が少なく比較的透明度が高い滞留水(プール水)の処理についてはセシウムが水中に少なからず溶存(イオン化)している可能性が高く,吸着剤(ゼオライトなど)又は吸着効果を持つ凝集剤を使用してセシウムイオンを吸着させて処理することで高い洗浄効果が得られました。洗浄水等の処理により,水中の浮遊物中に存在するセシウム,水中に溶存するセシウムを水中から固体として分離し,水はセシウム濃度が基準値(モデル事業では,飲料水に対する暫定規制値(200Bq/kg)(厚生労働省, 2011) 又は特定廃棄物の処分に伴う排水の濃度限度(134Cs:60 Bq/L,137Cs:90 Bq/L(混在する場合はそれぞれの濃度÷基準値の和が1以下))(環境省令33号第25条) を基準値としました)以下であることを確認して洗浄水として再利用するか放流しました。

 

 除去物を運搬する際の除去物の飛散を防止するために,密閉容器であるフレキシブルコンテナを用いました。フレキシブルコンテナの仕様は,直径1.1m,高さ1.1m,容量1m3,最大充填質量2tで,ポリプロピレン製あるいはポリエチレン製のものとしました。フレキシブルコンテナは,保管期間が終わった後に除去物を取り出す際の除去物の飛散防止も考慮し,耐候性のものを用いました。さらに,このフレキシブルコンテナは,除去物からの予想される放射線量に対して十分な耐放射線性を有していることを確認しています。除去物が入った容器ごと,もしくは複数個の容器単位での表面線量率や重量を測定し,その記録も保存することとしました。表面線量率や重量等の測定結果に加え,除去物の発生場所や内容物の諸元,保管先等を確実にトレースできるように,個々のフレキシブルコンテナにIC タグや内容物記載タグを取り付けるとともに,除去物の定置位置情報についても記録することとしました。本事業の実施に伴い発生した除去物の保管については,除染関係ガイドライン(環境省,2011)に従い,

 

  • 除染した現場等で保管する形態(現場保管)
  • 市町村又はコミュニティ単位で設置した仮置場で保管する形態

 

により行いました*1。また,仮置場/現場保管場の整備・維持に関わる対策として,除染関係ガイドライン(環境省,2011)*2で求められている以下の2つの安全対策を遵守した仮置場/現場保管場の整備・維持管理が行える保管施設の設計・建設を行いました(図1)。

 

  • 除去土壌の放射能の濃度や量に応じて安全が確保できる保管施設を作ること(施設設計)
  • 除去土壌の搬入中や搬入後に適切な安全管理を行うこと。また,何らかの不具合があった場合は対策を行うこと(安全管理)

 

 除染作業の実施前に,除染実施対象地区の面積と分布する土壌の面積等に基づいて,各除染実施対象地区での不燃除去物及び可燃除去物の発生量を見積もりました。この除去物の発生量の見積り結果に加え,地元自治体からの要望や,地形の状況,土地利用状態等に基づき,仮置場/現場保管場の形式(図2)を選択しました。多くの地区は,地上保管型の仮置場/現場保管場を選択しました。一部の地区で,地上を利用したいとの自治体からの意向や,地下から掘削した土壌の有効利用,仮置き容積の確保等の観点から,地下保管型や半地下保管を選択しました。

 

 仮置場/現場保管場では,立木の伐採や整地,掘削等を実施した後,堰堤を構築することによって除去物を保管するヤードを設定しました。次に遮水シートや浸出水の集排水管,保護土を敷設しました。その後,除去物を定置し,上部の遮水シートの敷設や覆土を実施しました。また,集水桝やガス抜き管*3等の設備を設置するとともに,一部の仮置場では上部の遮水シートの外に遮光性の保護マットや,防火用砂を設置しました。

 

 

 敷地境界の空間線量率のモニタリングを定期的に(週に一度程度)実施し,搬入中に除去物による追加線量が年間1 ミリシーベルトを超えないことや,搬入後に概ね周辺環境と同程度となることを確認し,その結果を記録しました。施設からの放射性物質の流出を監視するため,施設周辺に設置する井戸を用いて地下水のモニタリングを適切な頻度で(月に一度程度*4)実施し,その結果を記録しました。必要に応じて,除去物からの浸出水を回収するために設置した集水管及び集水桝を用いて施設底部からの浸出水のモニタリングを行うとともに,仮置場/現場保管場の遮水機能が低下することによって,集水桝の水位に変化が生じる可能性があることから,水位も測定しました。浸出水の放射能濃度が基準値を超える場合は,集水桝内の水処理(除染)を行うとともに,原因を明らかにしたうえで必要な対策を講じました。防火対策の一環として,仮置場/現場保管場内部の温度を測定しました。また,一部の仮置場/現場保管場において,有機物の腐敗に伴い発生するガスの濃度も測定しました。測定にはガス抜き管を利用し,表面から1m 程度の深さの温度,一酸化炭素及び二酸化炭素の濃度を測定しました。また,本事業では,一部の仮置場/現場保管場において,温度センサー及び地中無線小型化送信機を内部に埋設した温度モニタリングの試行も実施しました。

 

 


図1 環境省の除染関連ガイドラインに基づく仮置場/現場保管場の安全対策

 

 

図2 様々な地形の状況や土地利用状態に応じた仮置場/現場保管場のイメージ

*5 地上保管型(斜面の場合)

 

*1 除染関係ガイドラインは平成25年5月に第2版(平成25年12月追補)となり,保管の形態として
・中間貯蔵施設で保管する形態(大量の除去土壌等が発生すると見込まれる福島県にのみ設置)
を追加しています。
 
*2 除染関係ガイドラインは平成25年5月に第2版(平成25年12月追補)となりましたが,設計指針および安全管理には変更がありません。
 
*3 除染関係ガイドライン第2版(平成25年12月追補)では,土壌を削り取る前に草刈りをすることから,除去土壌に混入する根や草等は少量であり,有機物の腐敗による可燃性ガス,悪臭に対する特段の措置は不要とされています。ただし,密閉性が高い構造の施設や,何らかの理由(例えば刈り草や落葉等の可燃性除去物を保管する場合など)で多量の有機物の混入が避けられない場合は,必要に応じてガス抜き等の措置を講ずるとしています。ガス抜き等の措置については,廃棄物関係ガイドライン第2版(環境省,2013)の除染廃棄物関係ガイドライン「腐敗性除染廃棄物の保管方法」を参照下さい。
 
*4 除染関係ガイドライン第2版(平成25年12月追補)では,月に一度以上の頻度で採取した地下水の水質検査(地下水中の放射性セシウム等の濃度を測定)を行うとされています。
 
*5 除染関係ガイドライン第2版(平成25年12月追補)では,保管場所は,安全性の観点から基本的には平坦地に設置するものとしており,やむを得ず傾斜地に設置する場合は,切土,盛土を行い,造成により平坦地を確保することとしています。