2.1 除染モデル実証事業

 東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の事故(以下,事故)により放出された放射性物質による環境への汚染が生じており,この汚染による人の健康又は生活環境に及ぼす影響を速やかに低減することが喫緊の課題となっています。131I(半減期約8日)などの比較的寿命の短い核種が十分に減衰しており,汚染の要因となる放射性物質のほとんどである放射性セシウム(134Cs と 137Cs)が除染対象の放射性物質となります。セシウムは,屋根やコンクリート面,枝葉,落葉などの表面に付着しやすく,特に粘土に吸着されやすい特性を有しており,その多くは土壌の表層に留まっています。放射性物質は福島県外まで到達するなど広域に及んでいます。除染の対象となるのは,「除染特別地域」,並びに 「汚染状況重点調査地域」となります。線量は主としてγ線による外部被ばくによるものであり,放射性セシウムの物理的減衰並びに風雨などの自然要因による減衰(ウェザリング効果)によって時間とともに減少していきます。
 事故による環境への汚染が生じてから,除染が段階的に進められました。まず福島市,伊達市などの居住区域で家屋の除染や学校の校舎の洗浄,校庭の表土剥ぎ取り,通学路の洗浄,プール水の浄化などが行われました。これに続き,事故の収束状況を見通しつつ避難区域での除染が着手されました。
 事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法が制定されました(2011年8月30日,基本方針11月11日,施行規則12月14日)。国がモデル事業を実施することで,線量が特に高い地域における効率的・効果的な除染技術及び作業員の安全を確保するための方策を確立した上で,特別地域内除染実施計画を策定し,段階的に土壌等の除染等の措置を進めるとの方針が示されました。
 除染作業を実施していく上で必要となる技術や知見を整備するために,国は除染モデル実証事業を日本原子力研究開発機構(以下,原子力機構)に委託しました。除染モデル実証事業では,年間の追加被ばく線量が20mSvを超えるような高線量の地域を主な対象とし,効率的・効果的な除染方法や作業員の放射線防護に関わる安全確保の方策を確立することを主な目的とし,避難区域(警戒区域,計画的避難区域)等において,対象地区の面的な除染を実施し,どのような除染方法が効果的か,除染によって線量はどの程度下げられるか,対象物の材質・周辺環境・汚染濃度等の要因が除染効果にどの程度影響するか等について評価・検討しました。
 除染は,計画をよく立案し,除染を適切に実施し,除染の結果等を住民や自治体関係者に正しく説明することが求められます。しかし,比較的人口の多い地域を対象とする等日本の条件を考慮した除染の計画立案や実施の経験がないことが,広域的な除染を本格的に実施するにあたっての主な課題となります。従って,除染モデル実証事業を実施することにより,除染を実施する国,地方自治体等が用いるガイドラインやマニュアルの作成を支援するための知見・知識を整理しておくことが重要でした。ここでは,除染モデル実証事業の実施概要と得られた主な成果・知見をまとめて紹介します。